第7章 はだかのままのヴィナス
「……ということは、アズールが飛べるまで俺も寮に戻れないってことでしょうか?
というか指導は先生の仕事なのでは?」
「そういうことだ。
学園長が生徒同士の協調性を高めたいと言っていたのでな。それにバイパーは教えるのが上手いとアジームから聞いている。期待しているぞ!」
「クソッ、カリムめ!
余計なことを言いやがって……」
隣に立つアズールとユウにしか聞こえない声量でジャミルが悪態をつく。
ホリデーの後も彼はカリムの事で色々と苦労しているようだ。
ホリデー前のジャミルはあまり目立たない男だった。凄く優れていることもなく、だからといって劣っていることもない平均的な生徒で、それがかえって彼を浮かせていた。
しかしホリデーが明け、ジャミルは己の力を隠すことをやめた。テストでも運動でも彼はクラスだけでなく学年でも上位に食い込むようになった。
表情も前はどこか機械的だったが、今ではすっかり人間らしくなり友人も増えたようだった。
因みにアズールは友人ではない。
こうしてバルガスの監視下の元、補習が始まった。
ユウは既に3周を終え、今は4周目に突入している。既に死にそうだ。
時折バルガスから声援が入るが、彼が大きな声を出すたびにユウの脚は重たくなる。まさかそういう魔法でも使っているのではないかと疑いたくなった。