第1章 シュガーリィは魔法仕掛け
「糸ぉ?……糸なんか付いてねぇんだゾ。疲れて幻覚でも見てるんじゃねぇのか?」
またもや呆れた顔をするグリムに、ユウは「うそ……」と声を漏らす。確かにその糸はユウの目に映っている。ユウは首を傾げ、そしてハッと恐らくこの糸が見える原因になった事を思い出す。
例の魔法薬学の授業で、失敗したショッキングピンクの薬品を被ったからではなないだろうか、と。
恐らく、いや、絶対にそうだ。
今日クルーウェルにはしこたま怒られ暫く彼の顔は見たくなかったが、明日また会いに行かなくてはならないことが確定し、ユウは再びベッドに倒れ込んだ。
○
翌日の放課後、ユウは重たい足取りで錬金術・魔法薬学研究室へと向かう。
そこはクルーウェルの根城で、今までにも何回か入った事があるが、学校の一室とは思えないほど部屋全体から"クルーウェル感"が漂っていた。
本当は昼休みに行こうと思っていたのだが、ジャックからクルーウェルは午後の授業の準備で忙しそうにしていたという情報を聞いたためユウは憂鬱な気持ちを抱えたまま放課後まで過ごしたのだった。
研究室に着く。
扉の前で二度深呼吸をし、3回ノックをすると、「入れ」という声が中から聞こえてきた。
「し、失礼しまぁす……」
恐々といった様子でユウは教室へと入る。
中に入るとクルーウェルは教室の真ん中に置かれている革のソファに脚を組みながら腰掛け、小テストの採点をしていた。
脚を組む姿がなんとも様になっている。
ユウは一瞬その姿に見惚れるが、直ぐに意識を取り戻し、コソコソとまるで初めて盗みに入った泥棒のような不格好さでクルーウェルに近づいた。