第6章 やがて糸は火となり繭となる 2
「あはっ。小エビちゃん顔真っ赤。耳まで赤いじゃん」
フロイドの楽しげな声がユウの鼓膜を震わせる。
彼女はギロリとフロイドを睨んだ。その目には薄らと涙が浮かんでいる。
ユウは三姉妹の末っ子だった。家族で男は父親のみ。
中学は共学であったが、そんな女の園みたいな家で育った彼女は学校でも男子と喋ることはほとんどなく、勿論お付き合いなんてしたこともなかった。
この学園に来たときも、自分以外は教師も含め全員男だった為、かなり緊張していたのだ。
まぁ、それも問題児ばかりのそれにすぐにそんな緊張はなくなったのだが。
話が逸れてしまったが、つまりユウには男の人への耐性が低い。
まるで恋人に接するかのようなフロイドのそれに、彼女はキャパオーバーを起こしていた。
「……私、フロイド先輩のそういうところ……嫌いです」
普段ならそんなことを言われれば不機嫌になるフロイドだが、今回はまったく不快な気持ちにはならず、寧ろ加虐心を煽られた。
思い切りその華奢な身体を絞めてみたい。
その白くほっそりとした首に噛み付いてみたい。
そんな欲望が腹の中で渦巻くが、そんなことをしたらきっと本当に嫌われてしまうと思ったフロイドは、珍しく理性を利かせた。
「えぇー、オレは小エビちゃん好きー」
「………ありがとうございます」
ニコニコと笑うフロイドに、ユウは真っ赤な顔のまま小さくため息を吐く。
フロイドには何を言っても無駄だということが改めてわかった。