第6章 やがて糸は火となり繭となる 2
「魔法見せてあげる」
何が見たい?
フロイドがユウに聞いた。
時刻は11時。
そろそろ瞼が重たくなってくる時間だ。
ユウは少し考える仕草をした後、
「海の世界が見てみたいです」
と言った。
イソギンチャク事件の時に行った、あの海の中の光景をユウは忘れたことはなかった。
ユウのいた世界には人魚はいない。人魚というのは御伽噺の中の世界の住人なのだ。
幼少期の頃、あるアニメを見た。人魚のアニメだ。そのアニメを見て、ユウはその時本当に人魚がいると思い、それと同時に海の世界というものに憧れを感じた。
行ってみたいと、そう思っていた。
フロイドにその話をすると、「じゃあ珊瑚の海に来なよ」とにこやかに言う。
まるで、「寮に遊びに来なよ」とでも言うかのような軽さだ。
「泳ぐの苦手なので、私はきっと海の中じゃ生きていけないと思います」
「アズールに頼めば人魚にしてもられるよ。
そういう魔法薬作んのめっちゃ上手いからさ」
「流石ですね」
「最初は感覚掴めなくて泳ぐの大変かもだけど、オレがちゃんと教えたげる」
そう言ったフロイドは、まるで小さな子供が将来の夢を語るみたいな表情だった。
ユウはそんな彼の横顔に、「期待しています」と笑った。