第5章 やがて糸は火となり繭となる
ユウは自分が思っているよりもちゃんと喋れていた。
うまく取り繕えてはいるが、心臓の動きはいつもよりずっと速い。
「フロイド先輩が何で怒ったのか、私には分かりません。私、何か失礼なことを言ってしまいましたか?」
ユウはフロイドに問いかける。
しかしフロイドは黙ったままでいた。
何も言わないフロイド。
ユウはもう一度口を開こうとしたが、やっぱりやめた。
暫くの沈黙。
そしてフロイドが「あ"〜〜〜〜!!」と頭を掻き毟りながら声を上げた。
突然の大きな声に、ユウの肩は跳ね上がった。
「小エビちゃん!」
フロイドはユウと向き合い、彼女の華奢な肩をガシリと掴んだ。
布越しではあるが、フロイドの体温があまり感じられない。彼の体温が低いことをユウは知った。
「オレ、多分小エビちゃんのこと好き」
「は、」
ユウは目を白黒させる。
フロイドが何を言っているか理解ができなかった。
フロイドはあの日、ジェイドとアズールと話した日。あの後ずっとユウのことを考えていた。彼女のことを考えては、別のことに思考を飛ばそうとするが、結局はまたユウのことで思考を巡らせていた。
ジェイドとアズールには、もう冷めたと言ったが、そんなことはなかったとフロイドは思い知った。
だってこんなにも頭の中から離れないのだから。