第5章 やがて糸は火となり繭となる
残されたユウとフロイドは、ぽつんとあったベンチに腰掛けていた。
特に何か会話をするでもなく、ベンチに座り、木々の隙間から見える学園を眺めた。
日が暮れはじめ、夕陽が学園全体を照らしオレンジ色に染まっている。
「あのさ、」
ジェイドが行ってしまってからの長い沈黙は、フロイドによって破られた。
ユウはフロイドを見る。
「はい」と、返事をした。
フロイドは一瞬ユウに視線を向けるが、すぐにまた前を向いた。
「小エビちゃん、怒ってる?」
学園が夕陽に照らされているのと同じように、フロイドも夕陽に照らされている。
彼のピアスがキラリと光った。
オレンジ色に染まるフロイドの顔は少し不安そうで、母親を探す迷子の子供のようだった。
ユウはフロイドのことは別に嫌いではない。
しかし、怖かった。
いつ何をするか分からない彼はユウにとって未知の生物だった。
今だってフロイドのことは怖い。
昨日あんなことがあったから尚更だ。
しかし、フロイドのその表情を見て、ユウは怖がっていないでちゃんと彼と向き合わなければならないという気持ちになった。
「今は、怒ってません」
でも。と、ユウは続ける。
「あの時は腹が立ちました」