第5章 やがて糸は火となり繭となる
ジェイドがユウとフロイドの方を振り返る。そして、
「僕はこの辺りを散策してくるので、ユウさんとフロイドはここで待っていてください。」
と、言った。
その言葉にユウは思わず「え、」と声を漏らす。正直、フロイドと2人きりになりたくなかった。
ユウは縋り付くような視線でジェイドに無言の訴えをするが、彼は相変わらずの微笑みを浮かべるだけだった。
しかしフロイドだってきっとユウと2人きりは嫌なはず。ユウはチラリとフロイドに視線を向ける。フロイドは先程の不機嫌そうな表情ではなく、げんなりした表情でジェイドを見つめていた。
「散策はいいけど、もうきのこは採ってくんなよ」
「おや、何故です?」
「最近毎日きのこ食ってんじゃん!」
「しょうがないですね。では採ったら食堂に寄付します。そしたら彼も喜ぶでしょうし」
「彼?」
「いえ、こちらの話です」
フロイドはユウと2人きりになる心配より、ジェイドがきのこを採ってくる方が心配のようだ。
ジェイドが笑顔で「では」と2人に背を向ける。すると彼はその長い脚でスタスタとテンポよく歩いて行き、すぐに姿が見えなくなった。