第1章 シュガーリィは魔法仕掛け
ユウは少し、いや、かなり後悔していた。
グリムは言わずもがな問題児であるが、カリムもそれなりの問題児であった。当たり前だがグリム1匹でも面倒見切れていないのに、問題児を2人も制御する力はユウにはなかった。
今回作る魔法薬は"愛の妙薬"。黒板に材料や分量が書かれており、入れる順番や混ぜ方などは2年生に教えてもらえということであった。
因みにこの薬は嗅ぐと自分の一番好きな匂いがするのだとか。なので嗅ぐ人によって匂いが異なるらしい。
後この薬は無色透明らしいのだが、現在ユウ達がかき混ぜている大釜の中の色はショッキングピンクをしている。
ユウは絶対失敗したと確信し、遠い目をしながら鍋をかき混ぜた。
途中まではもしかしたらこれが最後には透明になるのかもと期待したが、向かい側でかき混ぜるカリムの「こんな色になったけ?」という呟きで、全てを悟ったのだった。
こうなったのは分量もろくに計らず材料を入れたグリムのせいか、それとも途中で材料の入れる順番を忘れてしまい残りの材料を適当に放り込んだカリムのせいか。
どちらにせよ3人まとめてクルーウェルのお仕置きが確定してしまった今、ユウにはどうでもよかった。しかしどうでも良いと適当に鍋をかき混ぜていたのがいけなかったのか、突然鍋の中身が爆発した。
ちょうどカリムは失敗したかもという事をクルーウェルに伝えに行っており、グリムはかき混ぜるのが疲れたと言ってユウの後ろに隠れてサボっていたため、その爆発した中身はユウにのみ降りかかった。
「熱っ!」
全身に薬を浴びたユウは持っていた木べらを離し、とりあえず顔についた薬を拭おうとすると、クルーウェルを連れてカリムが走って戻って来た。
鬼のような形相を浮かべるクルーウェルにユウは引きつった声を上げそうになるが、それよりも先にカリムが「大丈夫か!?直ぐに冷やした方がいいよな!?」とユウの顔面目掛けて水魔法をぶっ放したため、ユウの口から引きつった声が漏れることはなかった。