第1章 シュガーリィは魔法仕掛け
パッとユウの方を見たカリムは「おぉ!ユウか!」とその綺麗な顔を綻ばせる。ウィンターホリデーの一件から話す様になったカリムはこの学園では珍しい"良い人"で、ユウはそれなりに親しくさせてもらっている先輩たちの中でもカリムは上位に話しやすかった。
「カリム先輩、よければ私たちとペアになってくれませんか?」
他に親しい先輩いなくて……。
カリムはきっと心よくOKしてくれると思ったユウだが万が一にも断られたくなかった為、しゅんともともと華奢な肩を更にすぼめ、眉を下げることにより、より断りづらい雰囲気を醸し出した。
ユウは意外と強かな女なのである。
「あぁ!勿論いいぜ!」
「良かった!ありがとうございます」
ニカッと効果音がつきそうな笑みを浮かべたカリムにユウはホッと胸を撫で下ろす。
「いい加減降ろすんだゾ!」とバタバタとユウの腕の中で暴れるグリムに、ユウは「あぁそういえば抱えていたんだった」と思い出し、すぐさまグリムを床に降ろした。
ふなふなと不満を垂れるグリムにカリムは「グリムは相変わらず元気だなー!」としゃがみ込み笑うと、何処から出したのか青カビビスケットをグリムの口に押し込んだ。
不満を垂れていたグリムの口から今度は苦しそうな声が漏れる。
「なんだ、もっと食うか?」
と更にグリムの口にビスケットを押し込もうとするカリムをユウはちょっと引いたような表情で見つめた。