第3章 コバルトブルーの怪物を飼っている 2
ユウはフロイドに手を引かれ中庭に来ていた。
拉致されたのである。
ユウが連れ去られるとき、グリムは「子分ー!」と悲痛な声を上げていた。まぁ、追いかけてはくれなかったが。
中庭に植えている林檎は学園長自ら世話をし、大切に育てているらしい。
そして不思議なことに今は林檎の季節ではないのに、その実は赤く熟し木に実っていた。
フロイドが一本の林檎の木に近づくと、根本にどかりと腰を下ろす。
ユウもしずしずとフロイドの隣に腰を下ろした。
ユウは初めて授業をサボった。
罪悪感で胸がドキドキと鳴って、そわそわと落ち着かない。
しかし胸がドキドキと鳴っているのはそれだけが原因ではなく、寧ろ主な原因は赤い糸だった。
何故フロイドが知っているのか。
ユウはチラリと隣に座るフロイドを盗み見る。
しかし彼は彼女の気持ちなど知りもせず、呑気に欠伸なんかしていた。
ユウは赤い糸の件を切り出したかった。何度か話を切り出すために息を吸い込んだが、勇気が持てず、結局3回それを繰り返したところで「私、初めて授業サボりました」と凄くどうでもいい事を言った。
「えー、小エビちゃん真面目だねぇ」
「いえ、普通だと思いますが……。
フロイド先輩はよくサボるんですか?」
「別にそんなにサボってねぇけど。今日はほら、体調が悪かったからさぁ」
「そんな風に見えないですけど」
「マジだって。だって今日生理2日目だし。ほら、よくオレの顔見て。顔色悪くない?」
「あははっ」
ユウは思わず声を上げて笑った。
まさかフロイドがそんな事を言うとは思わなかったからだ。
少し気持ちが軽くなるのを感じる。