第3章 コバルトブルーの怪物を飼っている 2
あれ、オレ、小エビちゃんのこと好きなんじゃね?
フロイドはひとつ唸り声をあげてから、「ジェイド〜」と声を上げた。
「糸が繋がってるってことはさ、小エビちゃんはオレの番になるってことだよね?」
「必ずしもそうではないと思いますが……。まぁ、そうなる可能性もあるのでは?」
ジェイドの言葉にフロイドの気分が上がる。
正直彼の耳に「必ずしもそうではない」という言葉は届いていなかった。
モップの柄から顎を上げ、鼻歌まじりに掃除をし始めたフロイドをジェイドは顎に手を当てながら見つめる。そして、「でもフロイド」とその背中に声をかけた。
「彼女は異世界から来た身、いずれ元の世界に帰ってしまうのでは?」
フロイドの動きがピタリと止まる。
しかし振り返ったフロイドは笑っていた。
「あはっ、そんなの帰すわけねぇじゃん。というかそもそも異世界から来たのに糸がオレと繋がってたんだから、つまりそういうことでしょ」
人魚になる魔法薬を飲ませて、一緒に珊瑚の海で暮らすんだぁ。
小エビちゃんは可愛いけど、尾鰭がついたらもっと可愛い。きっと鱗だって綺麗な色してるよ。
ジェイドに背を向け、また掃除を再開したフロイド。
離れていく彼の背を見ながら、「あぁ、ユウさん。貴女はなんて可哀想な人なんでしょう」とギザギザと尖った歯を覗かせ笑った。