第2章 コバルトブルーの怪物を飼っている
くすくすと笑うユウ。
あ、これは愛想笑いじゃないな。と、ジャミルが思ったその時。突然、ブーンという羽音をたてて、虫が1匹ジャミル目掛けて飛んできた。
この寮はそこら中隙間がある。その隙間から虫が入ってきてもおかしくはなく、寧ろユウはいつものことだと冷静だ。
しかしジャミルは虫が嫌いだった。画面越しに見る虫ですら思わず顔を顰めてしまうのだ。それが自分の顔面目掛けて飛んできたらどうなるか。
ジャミルは絶叫した。そして飛び上がった。まるできゅうりに驚く猫のような動きだ。
そしてそのジャミルにユウは驚く。飲んでいた紅茶が変なところに入り、咽せてしまうくらいには驚いた。
だってまさかあのジャミルが、猫のように飛び上がって驚くなんていったい誰が想像できるだろうか。
「お、おい!ユウ!」
普段は"監督生"か"君"と呼ぶジャミルが珍しく彼女の名前を呼ぶ。
「座ってないで何とかしてくれ!」
彼のその言葉にユウはハッと我に帰る。ジャミルがあまりにも驚くものだから彼女もそれに驚き動けなかったのだ。
ユウは普通に虫が苦手だ。しかしこの寮で暮らしていく上で、苦手な事に変わりないが虫には大分慣れていた。
そもそもはじめてこの寮に足を踏み入れたときは、蜘蛛の巣はそこら中に張っているしゴキブリやムカデが床をカサコソと這っているしで本当に最悪な状態であった。
しかしその最悪な状態を普通に住めるくらいに綺麗にした彼女は表彰されてもいいくらいだ。