第2章 コバルトブルーの怪物を飼っている
「今タルト持ってきますね」
そう言って談話室から出て行ったユウをジャミルはティーカップに口をつけながらこっそり見つめる。
そしてぐるりと部屋を見渡した。
木でできた壁と床は見るからに古く、床は歩く度にギシギシと音を立てる。
隙間風が通る壁にはそれでもユウが修理をしたのか、真新しい木材が所々打ち付けてあった。
噂によるとここはゴーストまで出るらしい。
よく学園長はこんな所に女性を住まわせたな。と、ジャミルはもともと高くない学園長への好感度を更に下げた。
しばらくすると、ユウはトレーにタルトの乗ったお皿を2つと自分の分である紅茶を持って談話室に戻ってきた。
ニコニコと笑いながら「お待たせしました」と、タルトをジャミルの前に置く。
トレイから貰ったタルトはフルーツタルトで、苺やマスカット、ブルーベリーにキウイフルーツ、その他色とりどりのフルーツがたくさん乗っている、まるで宝石のようなタルトだった。
ユウは笑顔の時が多い。常に笑みを浮かべているというわけではないが、年上やそこまで交流がない人間に対しては笑顔で接している印象がある。
きっとその笑みは一種の境界線なんだろう。
「そういえば、グリムはいないのか?姿が見えないが」
ユウがジャミルの向かい側のソファに腰掛ける。
寮が古ければ、勿論家具も古い。ギシッと軋む音がソファから鳴る。
「グリムは今日はハーツラビュルでエースたちとお泊まり会です」
「君は行かないのか?」
「先輩、さっきご自分が言った言葉覚えてます?」