第14章 夢みていたのおとぎ話の世界 2
しかしヴィルは意外にもそれに「いいわよ」と了承すると、ユウの前で両手を広げた。
「ほら、来なさい」
その言葉でユウはヴィルの腕の中に飛び込んだ。
ガシリと熱い抱擁。
しかしそこには男女のあれこれは一切なく、まるで兄妹が別れを惜しんでいるかのように感じた。
「ありがとうございます」
ヴィルの胸に顔を埋めるユウが震える声でそう言ったのを聞いたのはヴィル本人だけだった。
それから一人一人、一足早い別れの言葉をユウに告げた。
「君がいなくなったらエース達が心配だね」
リドルの言葉。
「フロイドが悲しみますね」
ジェイドの言葉。
「君が故郷に戻っても、俺たちの事を忘れないでいてくれる事を願っている」
ジャミルの言葉。
ユウは思わず泣きそうになりながら、一人一人の言葉に返事を返した。
そうしていれば、昼休みはあっという間に終わってしまい、ユウはろくにご飯を食べることが出来なかったが、それでも今はお腹よりも胸がいっぱいで、そんな事は気にならなかった。
彼女が唯一気になったことといえば、フロイドが食堂にいなかったことだ。
学園長から出て、いったい何処へ行ってしまったのか。
アズールとジェイドに聞いても、放送があって出て行った切り、戻って来ていないと言われた。
まさか、もう会えないなんてことはないよな。と、ユウは一抹の不安を覚えた。