第2章 コバルトブルーの怪物を飼っている
サラッと嫌味を言われるが、驚きすぎたユウはそれに対し反応することが出来なかった。
そもそもウィンターホリデーの時くらいしかジャミルと話したことがなかったユウは、予想だにしていない人物の訪問に大袈裟すぎるくらい驚いていた。これがまだハーツラビュルの先輩たちであったならここまで驚きはしなかっただろう。
「えっ、じゃ……ジャミル先輩?ど、どうしたんですか?」
やや挙動不審になりながら、ユウは掴んでいたドアノブを離す。
そして一応の弁解として、「エースかデュースかと思ったんです……」とか細い声でそう言った。ユウは恥ずかしさで自分の頬が少し火照るのを感じる。
「エース達はよく此処に来るのか?」
「えぇ、まぁ……それなりに」
「そういえばホリデーの時もあの2人は帰省していたにも関わらず君を助けにきていたな」
「はい、まさか来てくれると思わなくて驚きました」
砂漠の中を汗だくになりながら走ってきた2人の姿を思い出し、ユウは小さく笑う。
入学したばかりの時では考えられないことだ。
「仲が良いのは良いことだが、あいつらも男だ。あんまりほいほい部屋に入れるのは気をつけた方がいい」
その言葉にユウは「そうですね」と真剣に頷く。
エースなんかは比較的綺麗な空室に色々と私物を持ち込んでいる。もしや第二の自室にするつもりではないかと気が気ではない。