第14章 夢みていたのおとぎ話の世界 2
「ラギーに、何か言われたのか?」
その声は静かで優しいが、誤魔化すことを許さない。とでも言うかのような雰囲気を纏っていた。
しかしユウはすぐには答えることが出来ず、まるで叱られている子供のようにジッと下を向いた。
そしていよいよシンっとした沈黙が痛くなった時、視線を上げると共になんとか声を振り絞った。
「………ダンスパーティーの時……私がジャミル先輩を、振ったって………噂になってるらしくて………」
その声はユウ自身が思っているよりもずっとか細かった。
「あぁ、そのことか」
ジャミルは何でもない風にそう言うと、「別に君が気にすることじゃない」と少し突き放すように告げた。
ユウはまた治まってきていた涙が込み上がって来そうになり、一度強く唇を噛んでから、ジャミルを見つめた。
「な、何で……そんなこと言うんですか……?
だって私が………」
「君は、これ以上俺を惨めな気持ちにさせたいのか?」
ユウはひゅっと息を飲む。
彼女を見つめるジャミルの目は獲物を狙う蛇のように鋭かった。
「君は俺じゃなくフロイドを選んだ。
俺は振られたんだ。
ダンスパーティーに君を誘ったこの意味、分かっているはずだ」
俺は君が好きだ。