第14章 夢みていたのおとぎ話の世界 2
「まぁそれは兎も角」
ラギーが袋にタッパーを戻しながら言う。
「アンタ、ダンスパーティーでジャミルくんフったって本当っスか?」
その声は決して小さくはなかった。
しかし忙しく動き回る寮生には聞こえなかったようで、ユウだけが身体を石のように硬直させた。
「そ……そんなこと………」
ユウは震えるような声をやっとの思いで喉から絞り出す。
「ダンスパーティーで、最初はユウくんとジャミルくん一緒に踊ってたけど、途中からずっと1人みたいだったから。皆んなアンタに振られたんじゃないかって噂してるッスよ」
ラギーのその言葉にユウは愕然とした。
まさかそんな噂をされているなんて。
ユウはダンスパーティーでフロイドのことを追いかけた時のことを思い出す。
あの時ジャミルは何も言わずにユウをフロイドの元へ行かせてくれた。
あの時のジャミルは………
「そんなっ……!ち、違います!」
ユウは否定した。
そして思わず泣きそうになり、慌てて自らの下唇を噛み締めた。
ラギーは聡い人だ。
泣きそうになっているのを悟られたくないと、ユウは俯いた。
その時、
「どかしたのか?」
ユウの後ろから落ち着いた声が聞こえてきた。
その声にユウはびくりと肩を震わせ、そしてゆっくりと振り返った。