第13章 夢みていたのおとぎ話の世界
「フロイド先輩はそれ、何飲んでるんですか?」
ユウはフロイドのグラスに視線を落とす。
フロイドの手元にあるドリンクも、ユウのものと同じように無色透明だ。
「これぇ?ジン・トニック」
フロイドはグラスを持ち、揺らす。
氷がグラスの中で踊り、カラカラと音をたてた。
「あ、聞いたことあります。でもそれってお酒ですよね?」
「そ、内緒だよ?
せんせーにバレたら怒られちゃうから」
モストロラウンジでは、教師には内緒でアルコールも取り扱っている。
その存在を知っている者は常連客のみで、教師に告げ口をする者はいない。
誰だって楽しみを取られたくはないからだ。
歯を見せて、悪戯な笑みを浮かべるフロイド。
ユウはカクテルの入ったグラスを両手で遊ばせながら、「程々にしてくださいね」と苦笑した。
注文したシーフードパスタが来た時、フロイドはユウに「小エビちゃんの故郷はどんなとこなの?」と質問した。
ユウは一瞬ドキッとして、「え?」と聞き返す。
「ほら、一応小エビちゃんは珊瑚の海に来たことあるじゃん?でもオレは小エビちゃんの故郷に行ったことないからどんなかなぁって思って」