第2章 コバルトブルーの怪物を飼っている
「す、すみませんフロイド先輩……。先輩の右手に何か付いているように見えて………でも、あの、私の見間違いでした……」
すみません。
と、ユウはもう一度謝る。
するとフロイドは「ふーん」と鼻を鳴らす。
「なぁんか納得できねぇけど、飽きたからもうどうでもいいや」
掴んでいたユウの顔をパッと離すと、フロイドは「じゃあね小エビちゃん」とニコニコ手を振りながら去っていく。そんな彼の後ろ姿に「あ、はい」とユウはか細い返事をした。
「フロイド先輩って、本当感情ジェットコースターだよな」
「あぁ、いつ不機嫌になるかわからないからな。出来る事なら関わりたくない」
「こ、怖かったんだゾ〜」
フロイドが去ってから口々にそう言う男たちに、ユウはキッと睨みをきかせた。
「私はもっと怖かった。助けてくれてもよかったのに!」
「いやいや何言ってんだお前」
「絶対に無理だな」
「余計怒りそうなんだゾ」
ユウとエースとデュース、そしてグリムは友達だ。しかしそれはフロイド……いや、リーチ兄弟の前ではそれは無効らしい。
「てかそんなことより、マジなの?」
ユウは中断していた食事を再開すべくスプーンを持ち直す。
するとエースが身を乗り出して聞いてきた。
後三口くらいで食べ終わるカレーから顔を上げ、ユウはエースをジト目で見つめる。
デュースはエースの隣で、グリムはユウの膝の上でそれぞれ「何のことだ?」と首を傾げた。
「例の糸、フロイド先輩に繋がってたんだろ?」
エースのその言葉にデュースとグリムは「え!?」と声を上げる。ユウがすぐさま「声が大きい」と咎めると、1人と1匹は慌てて手で口を覆った。
「な、何でリーチ先輩に?」
「そんなの私が聞きたいよ……」
「子分はフロイドとケッコンするってことなのか?」
「結婚って……そんなわけないでしょ」
「でも赤い糸が繋がってたってことはそういうことなんじゃねーの?」
デュースとグリムは純粋に疑問に思って聞いてくるが、エースに関しては色々と分かってる上でふざけて聞いてくる。
ユウは残り三口だったカレーを無理やり一口で頬張り、ニヤニヤとしているエースをギロリと睨んだ。