第2章 コバルトブルーの怪物を飼っている
「先輩……その、右手………」
「んー?右手がどうかしたの?」
フロイドは自分の右手を見て首を傾げ、「何か変なとこある?」と手をぱぁっと広げユウの顔のすぐ近くに持ってきた。
突然自分の顔を覆うくらいの大きな手が目の前に近づいてきた為、ユウは反射的に背中を反らす。そしてこれまた反射的に助けを求めるような視線を向かい側に座るエースとデュースに向けた。
首を傾げるデュースと何かを察しているような表情のエース。
ユウが左手の小指を立て見せると、エースは確信に変わったようで、「えっ、嘘だろ!?」というようなギョッとした表情を浮かべた。
デュースはユウが小指を立てて見せてきたことにより一層首を傾げ、彼女の膝の上にいるグリムもきっと何のことだか分かっていない。
「ちょっと、小エビちゃん」
ユウがエースたちの方を見ていると、後ろから背筋が粟立つ様な声をかけられる。ユウは胃がヒュンと縮まる様な感覚と共にすぐさま顔をフロイドへと向けた。
顔を向けると不機嫌そうな顔をしたフロイドに顎辺りを掴まれる。
「そっちから聞いてきたくせに無視してんじゃねぇよ。それとも何?小エビちゃん。そんなにオレに絞められたいわけ?」
フロイドの金色の右目が冷たく光る。
生徒たちの雑談でざわついていた食堂が少し静かになる。こころなし温度も下がったような気がした。
ユウはひゅっと息を飲み、それでもなんとか「先輩……」と声を出した。