第12章 月を見てる君を見ていた 2
「は、マジなんなのジェイド。ノックは?ノックしろよ。兄弟でもそーいうのはちゃんとした方がいいと思うオレ」
「しましたよ。というか、いつもノックしないで部屋に入ってくるのはあなたでしょ。フロイド」
「してるから。心の中で」
「物理的にしてください」
意味ないでしょ。それでは。
ジェイドはやれやれと肩を竦めながら、フロイドのベッドに座った。
フロイドはそれを怪訝そうな表情で見つめ、「てか何、何か用?」と、ベッドに胡座をかいた。
「いえ、ただフロイドが元気そうで良かったなと」
ジェイドはいつもの様にニコニコと笑う。
こう見えて、ジェイドはフロイドの事を心配していた。
はじめ、ユウがジャミルとダンスパーティーに行くのだと、わざわざジェイドのクラスに来て嘆いていた時は大して心配などしていなかったのだが、その日を境にフロイドは段々と元気がなくなった。復活したかと思えばまたすぐに落ち込み、普段から気分の浮き沈みが激しいフロイドだが、それはいつも以上だった。
フロイドの気分によって味が変わる賄いは、いつも塩辛くて最悪だった。
今日だって、ダンスパーティーに行くのに渋る彼をアズールとジェイドの2人がかりで何とか着替えさせ連行した。