第12章 月を見てる君を見ていた 2
グリムは彼女のその言葉に驚くが、相変わらず涙を流し続けるユウにどうしたらいいのか分からず何も言うことができない。
静かな部屋に、彼女のしゃくりあげる声だけが響く。
「私……」
ユウがまたぽつりと言った。
「もうすぐ、帰らなくちゃいけないのに……」
その小さな声はエコーのように響いたような気がした。
ダンスパーティー2日前、ユウが学園長に呼び出された日、その時彼女は学園長に故郷に帰れる目度が経ったと告げられたのだ。
「1週間後、貴女は故郷に帰ることができます。
頑張って帰り道を探したんですよ?私、優しいので」
いつか来るとは分かっていた別れは、ユウが思っていたよりもずっと早く来た。
後4日。彼女がこの世界にいられるのは後4日しかない。
ユウはこの事をまだ誰にも話してはいなかった。
グリムはそこで初めて「ふな"!?」と声を上げた。
そしてわんわんと泣くユウに釣られ、一緒に声を上げ泣いた。
2人しかいないオンボロ寮に、その日一晩中泣き声が響き渡った。