第12章 月を見てる君を見ていた 2
ユウはオンボロ寮の扉を開け、中に入ると後ろ手にそれを閉めた。
グリムはもう寝ているのか、寮の中は真っ暗だ。
ユウは扉に寄りかかり、そしてずるずるとその場にしゃがみ込む。
彼女の目から大粒の涙がぼろぼろと溢れ出た。最初の涙が溢れてしまうと、後はもう止めどなかった。
静かに泣いていた彼女だが、途中から堰が切れたかのようにわんわんと声を上げて泣いた。
眠っていたグリムが起きてきて、「ど、どうしたんだゾ!?」とユウの足元を彷徨く。
ユウは何度かしゃくりあげると小さな声で、「どうしよう……」と言った。
「どうしよう……グリム……どうしよう………」
うわ言のように繰り返すユウ。
「私、フロイド先輩が好き……!」
どうしようもないほどに、恋い焦がれてる。
「月が綺麗ですね」なんて、ユウは本当は言うつもりなかった。
例えフロイドがその意味を知らなくても。
「ありがとうございます。でも、ごめんなさい」と断るつもりだった。それなのに彼があまりにも熱っぽい目で、情炎を感じさせる目でユウを見つめるから、言うつもりもなかった愛の告白なんてしてしまった。
そして更にはキスをされた。
拒めばよかったのに、出来なかった。
ユウはフロイドにキスをされた時、心から一筋の熱い想いが流れでて、拒むことなど不可能だった。