第2章 コバルトブルーの怪物を飼っている
そうやってなんだかんだその話題が終わろうとしていた時。
「あれぇ、小エビちゃんだぁ」
間延びしたとろんとした声が、ユウの頭上に降ってきた。
エースやデュースの口から「ゲッ!」という声が漏れる。
ユウは恐る恐ると言った様子で振り返り、頭を上へと向けると、そこには案の定ギザギザと尖った歯を覗かせニヤリとした笑みを浮かべるフロイドが立っていた。
近くにジェイドやアズールはいない。どうやら今日は1人のようだ。
「……こんにちは、フロイド先輩」
フロイドは191センチという長身のため、座りながら彼を見上げるユウの首はほぼ90度に向いている。
ユウは首に負担を感じながら、にこりと愛想笑いを浮かべた。
「なんか久しぶりに小エビちゃんに会ったきがするー。久しぶりついでにギュ〜ってしてあげようか?」
「あっはっは………遠慮しときま……」
その時ユウは目を見開いた。
ズボンのポケットに右手を入れていたフロイドが、その手を外に出した時、彼の右手の小指にユウと同じように赤い糸が結ばれていたのを見たからだ。
そしてユウの目は自然と自分の左手小指へと向く。すると今まで長く長く伸びていた赤い糸は僅か50センチ程しかなく、その先はフロイドの右手の小指へと結ばれていた。