第11章 月を見てる君を見ていた
「小エビちゃん」
ユウの目が、月明かりでキラキラと輝く。
「好きだよ」
その告白はシンっとした中庭にスッと溶け込んだ。
「好きだよ。小エビちゃん。
明日になっても1ヶ月経っても、1年経っても……ずっと変わらないから」
小エビちゃんは?
フロイドは弱々しくユウに答えを求める。
ユウは瞳を揺らし、そして一呼吸置いてから空を見上げた。
「フロイド先輩……月が、綺麗ですね」
ユウのその言葉に、フロイドは首を傾げながらも、彼女と同じように空を見上げる。
今日は見事な満月で、手を伸ばせば月が掴めるのではないかと思うほど大きかった。
「月が、とても綺麗です」
気づけば、空を見上げていた筈の彼女はジッとフロイドを見つめていた。
フロイドもユウを見つめる。
告白の返事を聞いたのに、なぜ月の話をするのかフロイドにはわからなかったが、彼女があまりにも綺麗に微笑むから、フロイドは告白の返事などどうでもよくなった。
ただ、今日は月が綺麗で良かったと、そう思った。