第11章 月を見てる君を見ていた
深夜12時。
フロイドはユウをオンボロ寮へと送った。
「おやすみなさい。フロイド先輩」
そう微笑みながら言い、寮の扉に手をかけるユウをフロイドは「小エビちゃん」と引き止めた。
振り返るユウの肩に手を置き、そして彼女の唇に軽く口づけを落とした。
わずか数秒。
フロイドは唇を離すと、ユウの鼻に自分の鼻を当てる。ユウは何が起こったのか理解していないのか、ただ目を見開き固まっていた。
「小エビちゃん」
フロイドは鼻をくっつけたまま、風が吹けば消えてしまいそうな声で話す。
「ちゅー、していい?」
その言葉に固まっていたユウが、カッと頬を赤く染めた。
「も、もうしたじゃないですか……!」
「うん、だから……もう一回」
フロイドはユウの答えを聞く前に、もう一度彼女の唇を奪った。
先程よりも長く、唇の熱や柔らかさを確かめる様にゆっくと。
ユウは抵抗しなかった。
ただジッと彼の少しひんやりとした唇を受け止めた。
唇が名残惜しそうに離れる。
数秒間、フロイドとユウは至近距離で見つめ合った。
そして、
「おやすみ、小エビちゃん」
と、フロイドは小さな子供に語りかけるように言うと、マジカルペンを振る。
すると彼は魔法のようにパッと消えた。
残されたユウは暫くその場から動けなかった。