第11章 月を見てる君を見ていた
ユウが笑うと、それに釣られてフロイドも吹き出し、ユウよりもずっと豪快に笑う。
静かだった中庭が、2人の笑い声に包まれた。
一頻り笑うと、フロイドは「ねぇ、小エビちゃん」とユウに声をかけた。
「何ですか?」
応えるユウ。
フロイドは彼女の前に手を差し出した。
「オレと、踊って?」
ユウは驚いたように目を見開き、そして笑った。
「喜んで」
握られる手。
フロイドは彼女の腰に手を回す。
この細い腰に他の男が触れたのかと思うと、また怒りが湧きそうになるが、それ以上に自分たち以外人がいないこのダンスフロアで、例え音楽なんか流れていなくともこうして月明かりの元ユウと踊れることにフロイドの心は湧き上がった。
月明かりに照らされるユウはとても綺麗で、フロイドは思わずジッと彼女の顔を見つめてしまう。
そして自分ももう少し着飾ってくるんだったと後悔した。
こうして彼女と踊れるなら、髪だってもっとちゃんとセットして、アズールの気取った名前のコロンでも付けてくればよかった。と。
目を伏せていたユウが視線に気づき、フロイドを見上げる。
「見過ぎですよ」と照れたように笑う彼女にフロイドは、胸元を愛おしさで突き上げられた。
フロイドは握っていたユウの手を離し、そしてその手で彼女の頬を包んだ。