第11章 月を見てる君を見ていた
「初めてダンスの授業があった日から、先輩と全く会わなくなって、会ってもフロイド先輩、無視するんですもん」
ユウは一瞬だけフロイドから目を反らし、しかしすぐにまた彼を見た。
「それは、私がジャミル先輩のお誘いに頷いたからですか?」
暫くの沈黙。
そしてその沈黙を破ったのは「あ"〜〜〜〜!!もうっ!」と頭を掻き毟るフロイドだった。
「そうだよ!てか小エビちゃんだって酷くね!?オレが小エビちゃんのこと好きってこと知ってるくせに普通他の男の誘いに乗る!?オレが申し込むって普通わかんじゃん!」
先程まで表情が一切なかったフロイドは、今度は親に欲しいものを買ってもらえなかった子供のように感情的に叫んだ。
あまりの変わり身にユウは一瞬呆けるが、すぐ様反論に移る。
「だ、だってフロイド先輩は自由な人だから、絶対に誘ってくれるっていう確証がないんです!
好きだって言ってたくせに次の日にはやっぱなしとか言いそうですもんフロイド先輩!」
「はぁ!?何小エビちゃんはオレのことそんなに信用ならないクソ野郎だと思ってるわけ!?」
「日々の行いを振り返って見てください!
先輩のどこにそんな信用できる要素があるんですか!」
お互い全身を使って言い争う。
どのくらい経ったのか、彼らの言い争いが終わった頃には2人ともゼーハーと肩で息をしていた。
「フッ……」
ユウが小さく笑い声を漏らす。
前までユウにとってフロイドは怖い先輩であった。言いたいことなど勿論言えない存在で、しかし今はどうだろう。
フロイドに釣られ感情的になってしまったからというのもあるが、初めて彼に自分の気持ちを言うことが出来た。
それが嬉しくて、ユウは思わず笑ってしまった。