第11章 月を見てる君を見ていた
ユウがフロイドを見つけたのは、中庭だった。
沢山の人がいる大広間とは違い中庭はとても静かで、聞こえて来るのは時折吹く風の音だけだ。
「フロイド先輩」
井戸の近くに立つフロイドに、ユウはそっと近づき後ろから声をかける。
フロイドは振り返らない。
「フロイド先輩……。無視、しないでください。
私、先輩に冷たくされると……とても悲しくなります……」
ユウは後ろからフロイドのタキシードの裾を控えめに掴んだ。
ビクッと小さく彼の肩が揺れ、そして数秒後、大きなため息とともにフロイドが振り返った。
中庭に街灯はない。しかし街灯にも劣らない月明かりが彼らを照らしていた。
「何で来たの、小エビちゃん」
フロイドの顔に表情はない。
ユウはぎゅっと自分の手を握りしめ、フロイドを見上げた。
「フロイド先輩と、話がしたくて」
「話?それってウミヘビくんを放っておくほどのことな訳?」
「……私にとっては、とても重要なことなんです」
「ふーん」とフロイドは気のない返事をしながら頭を掻く。
ユウはフロイドから目を離さなかった。
「フロイド先輩、よく私に会いに来てくれましたよね。初めは驚いたけど、でも私、それが嬉しかったです」
でも。と、ユウは続ける。