第11章 月を見てる君を見ていた
ジャミルはユウに何かを伝えると、彼女をそこに残し何処かへ行ってしまう。
恐らく飲み物でも取りに行ったのだろう。
1人になったユウは、赤い顔を両手でパタパタと煽った。
フロイドはユウを見つめる。
ユウはフロイドには気づいていない。
ジャミルが側を離れ、ユウが1人でいると1人の男子がユウの側に寄って行った。
離れている為、その男子が何を言っているかはフロイドにはわからなかったが、恐らく迫っているのだろう。
ユウが苦笑いを浮かべ、手を振って拒否しているのが見えた。
フロイドの足は彼の意思とは関係なく、ユウとその男子の元へと向かう。
男子がユウに手を伸ばそうとした時、フロイドはガシッとその男子の伸ばされた手を掴んだ。
ハッとユウが息を飲む。
フロイドは掴んだ手に力を入れ、男子を睨んだ。
「何お前。まさか小エビちゃんに触ろうとしたの?」
凄むフロイドはまさしくギャングのようで、男子は「ひっ」と情けない声を上げると、なんとかフロイドの手を振り払い、逃げるように去って行った。
「フロイド先輩……あの……」
ユウがフロイドの背中に声をかける。
フロイドはチラリと彼女を見るが、すぐに視線を反らすと、その場から立ち去ろうとした。