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【ツイステ】引き合うさびしさの引力

第11章 月を見てる君を見ていた



「ご機嫌よう、フロイドさん」

マーメードドレスの彼女がフロイドの元にやって来ると、そう嫋やかに笑った。
それに対しフロイドは「うん」と素っ気なく返事をする。

「私、フロイドさんが人魚だって話を聞いたから、マーメードドレスにしてみたのだけれど……どうかしら?」

「え?あぁ……いいんじゃね?」

気のない返事に少しだけマーメードドレスの彼女の表情は曇ったが、しかしすぐに笑みを浮かべ「フロイドさんのその青のタキシード。とても素敵ね」と褒めた。

とても身長が高くて、スタイルもいいわ。
まるでモデルみたい。

マーメードドレスの彼女はフロイドを褒め倒すが、フロイドはそれを一切聞いていなかった。
彼の視線と全神経は今、大階段に注がれていた。

大階段にはユウがいた。
彼女の美しさは離れていてもわかった。
白とブルー、そして金の刺繍を施したドレスはこの大広間にいる女子のドレスの誰よりもシンプルだったが、彼女の美しさを存分に引き出していた。

ゆったりとした歩みでお淑やかに階段を降りて来るユウに、その場にいた者はみな彼女に釘付けになった。
誰もがユウに視線を向け固まる中、1人の男が颯爽と彼女に近づきその白く小さな手を取った。
ジャミル・バイパーだ。

ジャミルが一言二言彼女に何かを告げる。
するとユウは花が咲くように、その口元を綻ばせた。

フロイドの視界にはもう彼女しか写っていなかった。
今までに見たことがないくらい綺麗なユウは、ジャミルの為に着飾ったのかと思うと、フロイドを惨めな気持ちにさせた。

8時になった。
ダンスパーティーが始まる。
このダンスパーティーでは、各寮長たちが最初に前に出て踊る。
なのでアズールも前に出てペアの女子とワルツを踊るのだ。
もしフロイドのペアがユウであったのなら、フロイドは彼女の腰に手をやり、踊るアズールをニヤニヤしながら茶化すことが出来たのだが、今そんな気分にはなれそうもなかった。
だってフロイドのペアはユウではない。
可愛いあの子はジャミルのペアなのだ。
フロイドはこのダンスパーティーから抜け出したくてたまらなかった。




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