第11章 月を見てる君を見ていた
ヴィルは鏡越しにユウの顔を見つめると、満足気に頷く。
そしてテキパキとヘアセットに取りかかった。
数分後、ユウの髪はふわふわのシニヨンスタイルに纏められた。
後ろには、ドレスの刺繍とは色違いの銀のボタニカルのヘアアクセサリーが留められている。
ユウは目の前の鏡で自分が変わっていく様を見ていたのだが、改めて化粧とヘアスタイルが終わり、完成した自分の姿を見た時は思わず感嘆の声を上げた。
「凄い……ヴィル先輩、凄いです!」
私じゃないみたい!
そうはしゃぐユウに、ヴィルは「何言ってるのよ」と腕を組んだ。
「間違いなくアンタよ。他の誰でもない。
今ここにいる美しい女性は、ユウ。アンタの努力の結果よ」
ユウは目を見開く。そしてくしゃっと顔を歪ませた。
「……やめてください。ヴィル先輩……。
今そんなこと言われたら、泣いてしまいそうです」
「今泣いたら殺すわ」
「あははっ」
ユウは口に手を当て笑う。
化粧と服装のせいか、自然と彼女の仕草は上品なものになった。