第11章 月を見てる君を見ていた
ヴィルはそのコスメボックスから下地、ファンデーションを取り出し、ユウの顔に塗っていく。
ぽんぽんぽんとパフがテンポ良くユウの頬を跳ねた。
シェーディングまで済ませ、化粧の土台作りが終わると、今度はアイメイクに移る。
ヴィルはいろんな色のアイシャドウをボックスから出してはユウの顔とアイシャドウを交互に見て、また別の色を出してを暫く繰り返すと、漸く彼は納得するアイシャドウを見つけた。
「目を瞑りなさい」
目を瞑ると柔らかなブラシが瞼を滑る。
自分でやる時は何とも思わないが、人にやって貰っているせいか何ともむず痒く感じた。
ユウは笑ってしまわないように、キュッと口に力を入れた。
「開けていいわよ」
と、言われ、ユウはゆっくりと瞼を持ち上げる。
目の前の鏡に映った彼女の瞼はキラキラとピンクパープルに輝いていた。
光るラメはまるで瞼を濡らしているように見え、いつもよりも目がぱっちりと大きく見える。
しかしアイシャドウの色のお陰か、可愛らし過ぎず、大人っぽい印象を与えた。
ビューラーで睫毛を上げ、ローズ系のチークをほんのり色づく程度につける。そしてカシス色のルージュを塗れば、もうそこにいるのは16歳の少女ではなく、1人の女性だった。