第10章 私のための無垢なドレス 3
オンボロ寮に帰ってから、ユウはドレスを箱から出し、それを自分の部屋のハンガーに掛けた。
古臭い寮の中で、ドレスが光り輝いて見える。
ユウはこのドレスをグリムにも見せたいと思い、寮の庭でゴーストとマジフトをやっていた彼を呼んだ。
白熱した試合を中断されたグリムは不機嫌そうだったが、ドレスを見れば「よくわかんねぇけど、良いんじゃねぇのか?」と一応コメントをくれた。
「だよね。凄く可愛い」
「ふなぁ〜、オレ様はもう行くんだゾ」
ユウがにこにこと浮かれていれば、グリムは反対に呆れたように無い肩を竦めると、またゴーストとマジフトをする為に部屋から出て行った。
ユウは1人になった。
1人になった部屋は自分の呼吸音が聞こえてきそうなほど静かだった。
先程までの笑顔をどこかに落としてきてしまったのではないかと心配になる程、今の彼女は無表情である。
素晴らしいドレスと、誰かと一緒にいたことにより一時的に暗い気持ちから離れられたが、1人になると心配な事や不安な事が彼女を襲った。
ユウはベッドに倒れ込む。
うつ伏せに倒れた身体をのろのろと上に向け、天井を見つめた。
天井をぼぅっと見つめながら思うことはフロイドの事だった。