第10章 私のための無垢なドレス 3
ユウは「えっ!?」と驚きの声を上げる。
そして慌てて手と顔をぶんぶんと横に振った。
「そ、そんな……申し訳ないです!
ヴィル先輩だってご自分の支度があるのに……」
「えぇ、だから午後6時にはここに来て頂戴。
いいこと?アンタは所謂アタシの作品よ。アンタがここまで美しくなれたのはアタシのお陰」
「それは勿論!とても感謝しています」
ユウはコクコクと今度は首を縦に振った。
「それなら、最後までアタシに手を掛けさせなさい。それがアタシの作品であるアンタの勤めよ」
まるで女王様のようなヴィル。
彼の言葉にユウは思わず泣きそうになった。
ヴィルがユウを妹のように思っている様に、いつしか彼は彼女にとって兄のような存在になっていた。
鼻の奥がツンッと痛み、目頭が熱くなるのを感じながら、ユウは「ヴィル先輩は本当にカッコいいですね」と、いつもとお馴染みのセリフを言った。
彼女はヴィルに会う度このセリフを言うが、それはお世辞でも何でもなく、心の底からそう思って言っている。
そしてそれをヴィルもわかっているようで、「当然でしょ。アタシだもの」といつもと同じセリフを返すのだった。