第10章 私のための無垢なドレス 3
ユウはドレスの入った箱を抱え、ポムフィオーレ寮へと向かった。
クルーウェルにドレスを用意してもらうという話をヴィルにしており、その話を聞いた彼に「ドレスが届いたら見せに来なさい」と言われた為、ユウはこうして彼の領へと向かっているのだった。
寮へ着くと、いつもの談話室ではなくレッスンルームに通される。
レッスンルームはまるでバレエの練習の部屋みたいな雰囲気で、そこには勿論机などは置かれていない為、ユウは箱を床に置いた。
ヴィルが「この中にドレスが入ってるのね?」と、目で彼女に早く開けるよう催促をする。
ユウは先程のクルーウェルの様に蓋に手をかけ、ゆっくりと開けた。
ドレスを隅々まで見たヴィルは「ふぅん」と一言呟くと、「流石、クルーウェル先生ね」と言った。
「ドレスの色もアンタの肌の色によく合うし、正面は露出が少なく清楚な印象だけど背中が大きく空いてるのが、ただ清楚だけじゃ終わらせない大人の女性を感じさせるわね」
ユウは隣でヴィルのそのコメントを聞いて、成る程と何度も小さく頷いた。
正直彼の話にはあまりついていけていなかったが、それでもヴィルはやっぱり凄いという事だけは分かった。
ヴィルは暫くドレスを眺めると満足したようで、丁寧にそれを箱の中にしまった。
そしてユウを見て一言。
「アタシが当日アンタのヘアメイクをしてあげるわ」
泣いて喜びなさい。
と言った。