第10章 私のための無垢なドレス 3
最初に目に飛び込んできたのは、金のボタニカル柄の刺繍だった。
クルーウェルがドレスを箱から出し、ユウの目の前で広げる。
それはホルターネックのロングドレスで、白と青、金の3色のシンプルながらとても美しいドレスだった。
上半身が白、そして上半身と下半身をを繋ぐように、くびれ部分に金のボタニカル柄の刺繍が施してある。
下半身、スカート部分は青で、しかし青一色というわけではなく、まるでブルーモーメントのように青から白に近い薄紫へとグラデーションになっていた。
ホルターネックで首が詰まっているが、背中はざっくりと空いた、ストレートラインのシンプルでしかしとても美しく大人っぽいドレスに、ユウはうっとりとした溜息を溢す。
本当にこんなに綺麗なドレスを着ても良いのだろうか。ユウはそう思った。
「本当に……とても素敵です……」
ユウは夢心地で口を開く。
「私、こんな素敵なドレス着こなせるか……」
「仔犬。服というのは作った段階ではどんなに素晴らしい出来だろうと、その魅力は50%だ。人が着て、初めて100%になる。このドレスの魅力は50%だが、お前が着れば120%になるだろう」
クルーウェルの言葉にユウはほぅと息吐いた。
クルーウェルはドレスを箱にしまい、ユウに手渡す。
ユウは両手でそれを受け取り、クルーウェルの目を見つめた。
「クルーウェル先生。本当に……ありがとうございます」
箱を抱えたまま、彼女は深々と頭を下げた。
クルーウェルはそれを鼻で笑うと「4年に一度のイベントだ。精々楽しむんだな仔犬」と温かな声でそう言った。