第10章 私のための無垢なドレス 3
ユウは事の詳細をヴィルに語った。
ヴィルは話を聞き終わるとひとつ大きなため息を吐いた。
「フロイドがアンタの前に現れなくなったのはいつから?」
「確か……初めてダンスの授業が………あっ……」
ユウはティーカップに落としていた視線をハッと上げる。
ヴィルは呆れたような目をしていた。
「そう。あの男はただ拗ねてるだけ。
あんなデカい図体してる癖に子供みたいにね」
「……私は、どうしたらいいんでしょうか……」
「どうしたらって?」
「それは……」
ユウは言い淀む。
自分で言っておきながら、自分が何をしたいのか分からなかった。
ユウは俯いた。目の前に置いてあるティーカップの中で、ぬるくなった紅茶に彼女の顔が映る。
お世辞にもいい表情はしていない。
「放っておきなさい。こういうのはね、時間が解決するの。下手に謝ったりなんかしたら逆効果よ」
ユウはヴィルに何度か相談に乗ってもらったことがあるが、彼の言葉はどれも彼女の胸の中にストンと落ちてくる。
2歳年上の先輩。
ユウは自分が18歳になった時、彼みたいになれる想像がつかない。
「ヴィル先輩は、本当にカッコいいですね」
ユウがしみじみとそう言えば、ヴィルは「フンッ」と鼻で笑った。
「当たり前よ。アタシだもの」