第9章 私のための無垢なドレス 2
「あ"あ"あ"あ"あ"!!」
「うるさいですよフロイド。いったい何だと言うんです」
2年Eクラス。
フロイドは結局ユウには声をかけず、そのまま片割れのいるEクラスに来ていた。
大きな叫び声を上げながら教室に入ってきたフロイドにジェイド以外の生徒が肩をビクつかせる。
フロイドは叫び声を上げたままジェイドの腰に抱きついた。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
「うるさいです」
ジェイドの態度が冷たいが、フロイドは気にしていないようで彼の腹に顔を押し付ける。
「小エビちゃんがぁ、ウミヘビくんとダンスパーティー行くんだって……」
その弱々しい声は、ジェイドの腹に顔を押し付けているせいで、より一層弱々しく聞こえた。
先程の叫び声とは違い、今の声はジェイドにしか聞こえなかった。
「おやおや」
困りましたね。と、まったく困っていないような表情でジェイドが言う。
フロイドはもう一度「あ"あ"あ"あ"あ"!!」とジェイドの腹で叫ぶと、今度は急に静かになり、ジェイドから離れた。
そしてフロイドはスンッと表情を無くして「殺そう、ウミヘビくん」と言った。
今彼の目はハイライトが消えている。
「ダンスパーティー前に退学になりますよ」
「てかダンスパーティーって何なのそもそもの話。やる意味なくね?何で他人がいちゃいちゃしてるの見なきゃいけない訳?殺すぞ」
「おやおや」
最早ジェイドは面倒くさくなって「おやおや」しか言わない。
どうせ慰めたところでフロイドの機嫌は暫く良くならないと分かっているからだ。
できればモストロラウンジでの仕事までには機嫌が戻っていると良いなと思いながら、未だダンスパーティーへの不満を溢すフロイドに「おやおや」と相槌を打った。