第9章 私のための無垢なドレス 2
「……綺麗になろうと思ったのは、誰かの為か?」
ジャミルの言葉にユウは少し首を傾げる。そして「いいえ」と首を振った。
「自分の為です」
キッパリとそう笑顔を浮かべながら言った彼女に、ジャミルは「そうか」と頷きながらも少し残念に思った。
俺の為だったらよかったのに。
授業終了のチャイムが鳴る。
踊っていたペアがその繋いでいた腕を降ろしていく中、ジャミルは未だユウの手を握り、腰を抱いていた。
「ジャミル先輩?」
手を離さないジャミルにユウはどうしたのだろうと首を傾げる。
すると彼は、「ユウ」と彼女の名前を呼んだ。
「俺と、ダンスパーティーに行ってくれないか?」
授業が終わったのに身体を寄せ合って立っている2人に、生徒たちは皆視線を向けていた。
そんな中でのジャミルの言葉に、教室は騒めく。
ユウはカッと顔を赤く染める。
数秒、視線を揺ら揺らと彷徨わせると、ゆっくりとジャミルを見つめた。
「あ、あの………よ、よろしくお願いします……!」
「ふざけんなバイパー!」と野次も混じっていたが、教室はまるで告白が成功したかのような騒ぎになった。