第9章 私のための無垢なドレス 2
数分後、全員ペアが組めた。
男同士で組む羽目になった者たちは最後まで抵抗したが、トレインがマジカルペンを一振りすれば大人しくなった。
そして一番抵抗の激しかった2人組はダンスの手本として前に立たされ、トレインの魔法で操り人形のように踊らされた。
「何で俺が女役なんだ!」「いっそ殺せ……」という声が、蓄音器から流れる音楽に混ざって聞こえる。
お手本の2人が踊り終わると、いよいよ練習が始まった。
全員が踊るにはこの教室は狭いのではないかと思ったが、いつの間にかトレインが空間拡大魔法をかけていた為、普段の音楽室よりかなり広くなっていた。
魔法って何でもありなんだな。と、ユウは思った。
練習中、ヴィルとの特訓のお陰か彼女は中々上手に踊れた。
それにジャミルは少し驚いたようで、「何度か足を踏まれる覚悟でいたんだがな」と戯けて見せた。
それに対しユウは少し得意げに笑った。
ジャミルはとてもダンスが上手だった。
彼はブレイクダンスを嗜んでいるらしいが、ワルツも習っていたのではないかと思うほどだ。
「ジャミル先輩は本当に何でも出来ますね」
「君だって上手だ」
「良かった。実はヴィル先輩に指導してもらったんです」
「ヴィル先輩に?」
ジャミルは驚く。
だってあのヴィルがわざわざ教えてやるとは思わない。
「はい。ダンスだけじゃなくて、少し前から美容についても色々教えてもらってて」
ヴィルがどういう経緯で彼女に色々教えているかは分からないが、今のでユウが綺麗になった理由はわかった。
「凄いな。最近の君は前にも増して綺麗になったと思ったが、なる程。納得した」
「綺麗になりました?」
「あぁ、こうして話しているだけで思わず緊張してしまう程に」
良い女は男を緊張させる。
ユウはジャミルに褒められ、頬を赤く染めながらえへえへと笑った。