第9章 私のための無垢なドレス 2
「ダンスパーティーは全員にとって、勿論……髪を解き放ち、羽目を外すチャンスである」
しぶしぶと認めるという声だ。
生徒たちはお互いの脇腹を小突き合い笑いを堪えている。
「しかし、だからと言って、決してナイトレイブンカレッジの生徒に期待される行動基準を緩めるわけではない。羽目を外しすぎて、退学なんてことにならないよう気を付けるように」
勿論、ロイヤルソードアカデミーとボーバトン魔法アカデミーの生徒もだ。
と、トレインは取ってつけたように言った。
長々とした説明も終わり、いよいよ練習に入った。
習うよりも慣れろ。まずは男女2人組を作れ。
と、トレインから声がかかる。
皆んな取り残させるのはごめんだと慌てて行動を始めた。
今この教室は当たり前だが女子より男子の方が多い。つまり残った男子は男子同士でペアを組まなくてはいけないのだ。
そんな酷い絵面にはなりたくないと男たちは必死である。
ユウも取り敢えずペアの相手を見つけようとその場から動こうと思った時、「なぁ」とエースとデュースが2人同時に彼女に声をかけた。
振り返るユウ。
2人はお互いを牽制し合いながら「ペアを組んで欲しい」と言った。しかしこの時2人の声が同時だったため、ユウは彼らが何と言ったのかよく分からなかった。
聞き返そうと曖昧な笑みを浮かべれば、また別の人物が彼女の名前を呼んだ。
「ユウ」
教室内は騒がしかったけれど、その声はすんなりと彼女の耳に届いた。
ユウは声のした方へ振り向く。
立っていたのはジャミルだった。