【ヒプマイ】We are not siblings.
第1章 cross the line
一兄は私の部屋に入ると、ベッドの上の布団を取り去ってシーツの上に私を下ろした。
ジャケットだけ着て下は裸という姿に羞恥心を隠せず、私はなるべく下半身が見えない様に膝を立てると、一兄は私の上にそっと布団を掛けてくれた。
「一兄、本当にどうしちゃったの」
戸惑う私の問いかけを一兄は無視して、「ちょっとだけ待ってろ」とだけ言って一旦部屋を出た。
私は半分放心状態で天井を見上げていた。自分の鼓動が聞こえる位、ドキドキしている。私を抱き上げた一兄の顔は、お兄ちゃんの顔じゃなかった。あんな顔をしているところを、今まで一度も見たことがない。
すぐ戻ってきた一兄の手には、ミネラルウォーターが握られていた。
「お前、熱があるんだろ。水分はちゃんととっておいた方が良い」
そう言って私の傍に屈んで、ペットボトルの蓋を開けた。私に差し出してくれるのかと思って体を起こすと、一兄はミネラルウォーターを自分で口に含み、口うつしで飲ませるようにして私の口内に流し込む。
「んんっ……!」
思わず両手で一兄の体を押して突き放した。
「っ」
一兄は床に尻餅をつき、ペットボトルの中の水がこぼれて床に小さな水たまりを作る。
「俺は」
思い詰めた顔で床を見て、黙っていた。唇を結び、オッドアイの瞳が揺れている。
「一兄……?」
おそるおそる呼びかけると、一兄はペットボトルを床へ置き、私の体を押し倒すように屈んだ。
「……っ!」
「俺は、お前のことが好きだ」
私の頭の中で、もう一兄の言葉が繰り返される。
――俺は、お前のことが好きだ。
「一兄、それは、兄妹として、ってことだよね」
震える声で尋ねると、一兄は首を横に振った。
「違う。女としてお前が好きだ」