【ヒプマイ】We are not siblings.
第1章 cross the line
「俺が温めてやる」
いつもの明るい一兄の声はそこにはなくて、低くて脳内に直接届くような囁き声が鼓膜を震わす。
「やだよ、こんなこと、駄目だよ」
泣きそうになり、自然と肩が震えると、ふわっと私の肩に一兄のジャケットがかかった。
「とりあえず、これ着とけ」
ジャケットは一兄の体温で温められていて温かい。でもこれだけでは下は隠せない。早く逃れたい、と思うと不意に体がふわっと宙に浮き、お姫様だっこされたことに気付く。
「俺が部屋まで運んでやるから」
下から眺める一兄の顔は、優しくて格好いい、いつもの顔じゃない。唇を結んで、何か思い詰めたような顔をしていた。
「これから起こることは、全て俺が悪い。一生俺のせいにしてくれても構わない。……でも俺はどうしてもが欲しいんだ」
私はなすすべもなく、自分の部屋に連れて行かれた。