【ヒプマイ】We are not siblings.
第1章 cross the line
「あー、何か熱っぽいなあ」
いつものように家を出て、学校で授業を受けていると、3限目あたりで急に調子が悪くなってきた。体は熱いし、喉も痛い。昨日今日と寒暖差が激しかったから、もしかしたら、風邪を引いたのかもしれない。
休憩時間に保健室へ行き、先生から早退を勧められると、私は担任の先生の許可をもらい、荷物をまとめて高校を出た。寒気もしてきて、熱が上がってきそうな予感がする。
萬屋ヤマダのビルに入り、事務所を覗くと、一兄が机でパソコンをいじっていた。
「一兄、ただいま」
私の声に驚いて、一兄が顔を上げる。
「っ、どうしたんだよ。学校は?」
「それがさ、風邪引いちゃったみたいで早退してきた。珍しいよね、私が風邪引くなんて」
一兄は、机を離れて、慌てて私のところまで駆け寄ってくる。
「大丈夫なのか?熱は?」
心配そうな眼差しで、私のおでこに手のひらを当てると、眉をひそめた。
「何か、熱いな。お前、熱ありそうだぞ」
「……うん、寒気もするし、たぶんこれから上がってくる気がする」
「それは大変だ。俺が消化に良い飯作ってやるから、とにかく部屋で休んでろ。熱が下がらなければ俺が病院に連れてく」
一兄は過保護な位、私を気に掛けてくれる。その優しさは嬉しいけれど、私はもう16歳だ。萬屋ヤマダの経営で忙しい一兄に甘える訳にはいかない。
「ありがとう、一兄。でも大丈夫だよ、自分で何とか出来る。一兄が朝作ってくれたお弁当もあるし、病院だって一人で行けるから」
「でも……」
「一兄は仕事で忙しいでしょ?私はもう16歳だから、自分のことくらいなんとか出来るよ」
そう言って、私は踵を返して階段へ戻り、住居用のスペースへ戻った。