【ヒプマイ】We are not siblings.
第1章 cross the line
私は16歳で、二郎兄と同じ高校に通っている。でも、私自身は三人と血のつながりはない。戦災孤児で両親の顔は知らず、三人と同じ児童養護施設で育った。
そこで私をずっと気に掛けてくれていたのが一兄だ。二郎兄、三郎と一緒に児童養護施設を出るタイミングで、私を家族として引き取ってくれた。
だから一兄には、感謝してもしきれない。こんな温かな日常を得ることが出来て、私は心から幸せだった。
「ほらよ、弁当出来たぜ」
一兄が私と二郎お兄ちゃんの分のお弁当を持ってキッチンから現れた。綺麗にくるまれたお弁当箱の中身は、あえて聞かないようにしている。いつも開けたときの楽しみに取っておくのだ。
「ありがとう」
「いいなあ、姉ちゃんも二郎も。僕も早く一兄のお弁当が食べたいです」
ねだるような瞳で三郎が一兄を見ると、頭をくしゃっと撫でた。
「そうだな、お前ももう少ししたら高校生だから、楽しみに待っとけよ」
それから、朝食が終わるぎりぎりのタイミングで二郎兄が来て、三郎が二郎兄につっかかり、二人の間で喧嘩が勃発して一兄に一喝されるというのが毎朝のルーティンになっている。
こんな何気ない朝が続くことを、私は心から願っていた。