【ヒプマイ】We are not siblings.
第1章 cross the line
私の一日は、二郎兄を起こすところから始まる。
「ほら、起きて!」
よくそんな体勢で寝られるなあ、という位に、二郎兄はほとんどベッドからはみ出して寝ている。
「ん、ああ……、もうちょっとだけ」
何百回繰り返されたであろう、いつもの光景。私が布団を取り去ると、ふああ、と眠たげに目を擦って体を起こした。
「おはよう」
「おう、おはよう」
それから私はリビングへ行き、先に席に着いてご飯を食べている三郎の前に座る。
「姉ちゃんに起こされないと、二郎はいつまで経っても寝てるんだから、本当に甘ちゃん二郎ちゃんだよね~」
これもいつもの光景。三郎の一日は二郎兄の悪口をいうところから始まると言っても過言ではない。「二郎ちゃん」は良い方で、だいたいは「低脳」「バカ」とののしっている。
都度、訂正したり仲裁するとキリがないから、私はいつしか間に入ることを止めた。一兄が一喝すると、二人の喧嘩は終わるから。
「いただきます」
私は箸を持ち、手を合わせてから一兄が作ってくれた朝食を口に運ぶ。普段私が料理することが多いのだけれど、朝食だけは「学校に遅刻するのは良くない」という理由で一兄が作ってくれる。
「美味しいよ、一兄。ありがと」
キッチンに立っている一兄に声をかけると、「おう」と短い返事が返ってきた。