第6章 The decision is tonight
ハリーとともに長く続く階段を下りる。ついていくと言ったものの、怖くないわけではない。それをハリーに悟られないように、拳に力を入れ、足にムチを売って確実に1歩ずつ進んでいく。
傷が疼き出す。すぐそこに彼がいるという証拠だ。みぞの鏡の前に立つひとりの男。それは予想していた人物とは違っていた。
『クィレル先生?』
「あなたが?」
未だにスネイプ先生を疑うハリーが信じられないと話す。クディッチの試合の時、ハリーの箒に呪文をかけ殺そうとしたのはクィレル先生だったのだ。スネイプ先生は反対呪文でそれを阻止していたのだと、クィレル先生──クィレルは話す。トロールを入れたのも彼の仕業だ。スネイプ先生はずっと疑っていたのだ。
「さて、この鏡には何が映る?望むものが見える。賢者の石を持っている私…だが石はどこだ! 」
「その子らを使え」
「ここへ来い!ポッター!」
どこからが聞こえてくる不気味な声。傷の痛みは治まらない。思わずハリーの手を握りしめ、ゆっくりと鏡の前へと進む。ハリーも強く握り返してくれたことで1人じゃないと実感する。
「答えろ。何が見える?」
鏡に映るハリーと私。鏡に映る2人は実物とは違う動きをしている。手を繋いだままゆっくりと上がる2人の手。ちょうど胸の辺りまで上がると、2人の手がゆっくりと解け、その手の中には赤茶色の石がきらりと光っていた。石を持ったままもう一度手を繋ぎ、鏡の中の2人は楽しそうに笑顔を浮かべて、ゆっくりのふたりの腕が下りていく。左手に握るハリーの手の間に、固くゴツゴツとした感触があった。
「どうした言え」
「ぼ、僕が校長先生と握手を」
『寮が優勝しているわ』
「嘘だ!」
再び聞こえる地を這うような声。クィレルはその声の主を会話をしている。直に話そうと囁くその声。クィレルが頭に巻いているターバンをゆっくりと解いていく。ゆっくりと鏡から離れ、彼と距離をとる。気付かれないようにハリーが石を取り、自分のポケットへと入れた。
クィレルの後ろ姿が鏡に写っている。ターバンから現れたのはクィレルの後頭部にまるで寄生しているような白い顔だった。
「ハリー・ポッター。・。また会ったな」
「『ヴォルデモート』」