第6章 The decision is tonight
チェスはロンの得意分野だ。ここはチェスをするしかないようだ。ルールはわからないが、ロンに言われた通り、指定されたマスの上に立つ。
「何が始まるの?」
「相手の白のコマが先手を打ち、次が僕らだ」
ゲームは既にスタートしているようで、重たい音を響かせながら白いコマが動き出す。ロンが指示すると、黒いコマも動き出し、相手のコマに刀を突きつけられ、粉々になってしまった。つまり、魔法使いのチェスをここで行うということだ。
それからもゲームは続いていった。黒い馬に跨り指示をだすロン。コマの代わりになった私たちが傷つかないように、かなり時間をかけて慎重にコマを動かしている。目の前でコマが破壊されている様は、見ていていいものでは無い。破片が飛んできてそれを避けるのに精一杯だ。もちろん、避けきれず、鋭利なそれに腕や足が切れてしまった。
「待って!」
「いいね?ハリー。次の一手で僕はクイーンに取られる。君はキングを取れ」
「できないよ」
『ハーマイオニーどういうこと?』
「私もわからないわ。なんなの?」
「彼は身代わりに」
「『ダメよ』」
当然反対だ。仲間が身代わりになるだなんてとても見ていられない。他の方法を探そうと提案するが、ロンの意思はとても硬かった。先に進まなきゃいけないのはハリーとだ、とまっすぐ目を見て言われると、頷くしかできなかった。
「ナイトをHの3へ」
ゆっくりとロンのコマが動き出す。相手の番だ。白いコマがゆっくりと確実にロンの方へと進んでいく。その手に持つ剣でナイトの体を突き刺され、その衝撃でロンがチェス盤へと投げ出された。今すぐ駆け寄りたいが、まだゲームは終わっていない、とハリーに制される。
「チェックメイト」
白いコマが持つ剣が力なくチェス盤に落ちた。試合は終了だ。急いでロンの元へと駆け寄る。怪我はしているが、命に別状は無さそうだ。
「ロンを頼む。フクロウ便で校長先生に知らせて。僕は先に進まなきゃ…もロンを頼む」
『…ハリー、ここまで一緒に来たのよ?あなたを1人にさせないわ』
「そうよ、ハリー。ロンは私にまかせて…あなたたちならやれるわ。偉大な魔女と魔法使いだもの」
『ハーマイオニーだって』
「私はただのガリ勉優等生。もっと大切なのは友情とそして勇気よ」