第6章 The decision is tonight
次に落ちてきたのはハリーだった。未だに騒ぎ続けるロンは、落ちてきそうにもない。落ち着くようにロンに話しかけるが、焦りが邪魔して彼の耳に届かない。
「悪魔のワナは死を呼ぶ植物。でも太陽が苦手。そうよ!日光が嫌いなの。ルーマス・ソレム」
ハーマイオニーの杖の先から巨大な光が溢れ出す。無事に解放されたロンは、落ち着いてたからだ、と見当違いなことを話す。間違いなくハーマイオニーのおかげだ。
鳥のような虫のような、忙しなく動く羽音が聞こえる。上へと続く階段もあるが、私たちの目的はきっと下だ。扉を開けると、そこには鍵が飛んでいた。一つ一つの鍵に羽が着いている。ぱっと見るとトンボに見える。音の正体はこれだ。部屋の中心には箒が浮いていて、奥にはもうひとつ扉があった。
『あそこに扉があるわ』
ロンが杖を取りだし、ハーマイオニーから教わったのか、呪文を唱えるが鍵は開かないようだ。次に進むには箒で鍵をみつけ出さないといけないということだ。一つだけ他の鍵とは違い、古くて大きい鍵が不器用に飛んでいる。
「ラクすぎる」
「スネイプが鍵を取れるなら君にだって取れる。君は名シーカーだろ?」
誰が箒に跨るかは決まった。彼が箒を手に取った瞬間、穏やかに飛んでいた無数の鍵鳥たちが、一斉にハリーへ襲いかかる。
思ったより楽ではなさそうだが、さすがハリーと言ったところか。素早く鍵をつかまえ、扉の前にいる私たちに向かって投げる。見事キャッチしたハーマイオニーが急いで鍵を開ける。
『ハリー!』
箒に股がったままこちらに向かってくるハリー。彼が通過したことを確認し、急いで扉を閉める。扉の向こう側で鍵が突き刺さる音が聞こえた。
次に現れた重い扉には鍵がかかっていなかった。そこには墓地を思わせるような重たい雰囲気が漂っている。
「チェス盤の上だ」
ロンの言葉と同時に部屋が明るくなり、全体の様子が明らかになった。白と黒で作られた正方形のマスの上に、同じく白と黒でできたコマ達がたたずんでいる。
『確かにチェス盤みたいだけど…通り抜けられそうね』
「ドアがある」
真っ直ぐ進もうとすると、チェスの駒が動き出し、両手に持つ剣で道を塞がれてしまった。
『…そういうわけにもいかないみたい』
「どうする?」
「チェスの試合をして向こう側へ」